さてさて,年越しの連休を利用したテンプレート作りも佳境に入ってきました。必要なテンプレは大体できたので,一番気合いが必要なネックの接合部「ネックポケット」のテンプレ作りに入ります。
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年末に作ったテンプレート達。 |
ネックポケットって何?
その名の通りネックを収めるためのポケットです。ボディとネックの接合部になります。
ギターによっては,
ボディとネックが外せない「セットネック」や「スルーネック」という作りもあるのですが,下の写真のように取り外せる作りになっている物を「デタッチャブル」とか「ボルトオン」と呼んでいます。このボディ側のスペースがネックポケットです。
デタッチャブルのメリット
さて,このデタッチャブル方式ですが,セットネックが標準的な作りだった時代にフェンダー社が採用した接合方式です。メリットは,大量生産に向いていることでした。ネックとボディを別々に作ることができ,生産性が飛躍的に上がりました。そうなると製造コストを落とすことができ,販売価格も下げることができます。また,プレイヤーのメリットとしてはメンテナンス性の向上です。ネックが外せるということは,リペア作業が楽になります。もしネックが折れてしまっても交換することができるのです。
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外してみると面白いことに,ポケットやヒールの部分にマジックやチョークでなんか書かれています。番号だったりビルダーの名前だったり日付だったり。今回はパックマンがいました。 |
デタッチャブルのデメリット
便利なデタッチャブル方式ですが,デメリットもあります。
下の写真は私が所有しているフェンダー社のストラトキャスターですが,見て分かるようにボディとネックに隙間があります。このように完全に一体でないために弦の振動が伝わりにくいと言われています。つまりは音の伸び,「サスティーン」が犠牲になるということです。楽器なのに音が犠牲になるというのは本末転倒かもしれません。
もうひとつ大きなデメリットがあります。この状態でネックに横方向の力がかかるとどうなるでしょう。わずかでも隙間があるということはネックがそちらへ動くということです。わずかな動きに見えるかもしれませんが,弦の長さは648mmもあります。ここでのわずかな動きはヘッド部分では大きな動きになってしまいます。センターがずれることでチューニングは不安定になり,オクターブピッチもずれるでしょう。
じゃあそうならないように隙間なくガチガチにはまるようにして,ボディとネックの接触面積を増やせばいいじゃない!と思うかもしれません。もちろん可能でしょう。ただそうなるとコスト面でのメリットが消えてしまいます。
ピッタリはまるというのは大量生産品としては危険です。相手は木材ですから,乾燥材とはいえ湿度や気温によって膨張・収縮します。そうなるとボディとネックの組み合わせによっては「はまらない」ケースもでてきます。そうなると組み上げる段階で一手間必要になってきます。それでは人件費も余分にかかり,生産性も下がってしまいます。
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ネックポケットの隙間。紙一枚ぐらい入る感じ。 |
じゃあ自作なら?
ここが自作のメリットです。とにかく自分のボディとネックが合いさえすればいいわけですから。これでもか!というくらいガチガチに作ってしまえばいいのです。生産性なんて関係ないのです。だって趣味なのですから。
で,フェンダー社の設計図をもとに,線1本分ほど,ほんのわずかに小さくした図面を引いてテンプレートを作ります。
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ストラトの図面。インチ表記なのでミリに変換しながらの作業でした。 |
図面から切り出したMDF板を微調整していきます。サンドペーパーで少し削ってはネックを合わせ,また削っては合わせ・・・。髪の毛1本分の隙間すら許さない精度を目指します。
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細かい修正。何度も現物合わせで調整をしていきます。 |
完成!
完成しました。隙間はどこにもありません!
ちょっと強めにはめてやると,グッという音を立ててはまります。手をはなしても落下しません。時間コストを気にしなくてよい,趣味のハンドメイドのならではの仕事です。
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テンプレート完成 |
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ぴったりです。隙間はどこにもありません。 |
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持ち上げても落ちません。 |
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